高すぎて買えない安心(津波観測用ブイ)
2016年4月には九州地方においてマグニチュード7を超える超巨大地震が連続して発生し、死傷者が多数発生するという悲惨な震災が発生しました。
東日本大震災から5年が経った今年、日本という国が地震と隣り合わせの国であることを改めて思い知らされました。
今回の開発テーマは、地震に関連したものにしようと考えていたところ、私が定期購読している朝日新聞の3月12日の記事を思い出しました。
インターネットにも掲載されておりますので、紹介します。
インドネシアの国の財源不足により、津波観測用ブイが活かされていないという記事です。
高くて買えない津波観測用ブイ
この記事を読んでその金額に驚いたので、記憶の片隅に残っていて今回の九州地方の地震で思い出しました。
上記のサイト上には具体的な金額は記載されておりませんでしたが、新聞には一機あたりの料金が紹介されておりました。
その額、日本円で約3,500万円。
高っ!しかも耐用年数5年で修理不可とのこと。
沿岸部での設置のため、点検費用もインドネシアが設置した分すべて合わせると年間2億6000万円必要とのことで、同国には必要基数の追加購入が困難かつ十分な点検もされていないとのことです。
(NHKオンラインニュースより引用)
私はインドネシアに詳しいわけではありませんが、少ない財源を優先順位をつけながら割り振りをしていると思いますし、津波対策を軽んじているわけでは決してないと思います。
この金額が高いのか安いのか、使っている部材や技術のものさしが私には無いので何とも言えませんが、費用面で買えないという国が存在してしまっているという事実はあるわけです。
そもそも、津波予測ってどうやってる!?
日本はこれまでも数多くの地震に見舞われた国ゆえ、おそらく地震や津波に関する予想技術は世界でもトップレベルだと思います。
東南アジアなどの地震国の方達が日本を視察に来たり、技術を学びに来ているというニュースはよく耳にします。
地震が発生すると、まず緊急地震速報の技術が活用されて津波警報・注意報が発令される仕組みになっています。
(気象庁HP 津波警報・注意報の改善に関するこれまでの取り組みより引用)
各観測地点からデータを収集後、膨大な津波の情報が蓄積された津波データベースとの始まります。
照合が完了すると、津波発生の有無や津波到着時刻が算出され、さらに観測地点からのデータ収集と照合が進む、という仕組みのようです。
やや難しい内容ですが、気象庁のサイトに詳しく載っているので興味のある方はググってみてください。
気象庁 | 津波警報・注意報の改善に関するこれまでの取り組み
津波予測の方法がちょっとわかったところで、この3500万円する観測用ブイは何に使われているのかを考えます。
上記の各観測地点に該当するのがこのブイということでしょう。
ブイにはGPS波浪計が組み込まれているので、地点ごとの波の動きを把握できます。地震発生後、この観測地点の情報を集めた上でデータを解析し、津波予測とするわけなのでこの観測地点が多ければ多いほどデータの精度があがるというわけです。
万が一の時に備える必要なコスト
データ解析のための観測用ブイに3500万円かけた結果、子供たちへの給食配給が止まったり、医療費の高騰などが起きてしまっては、国民の安全に寄与する行為が裏返しになってしまいます。
万が一のための備えを充実させた結果、毎日の食事が貧しくなってしまうような防災対策はやり過ぎです。
津波観測用ブイの目的を果たすためには、数の力も必要になります。
そしてメンテナンスコストを低減することも必要です。
実際に観測用ブイに必要だろうと思われる最低限の機能を考えていきましょう。
①置かれる環境は海上という環境なので、耐久性や耐候性が必要にはなります。
②係留式ゆえ、係留索が切れたりすると沿岸部に被害を与えかねないので、係留対策は必要です。
③自給で電気を供給する必要があるため、太陽光発電もしくは異なる方法で電源の確保が必要です。
④もちろんGPS機能もです。
GPS波浪計システムの概要(釜石港湾事務所HPより引用)
さて、波浪計にもいくつか種類があるので一概には言えませんが、GPS機能はスマートフォン市場成長と共に技術・コスト両面から飛躍的に導入のハードルが下がりました。配電設備についても電気自動車を中心にリチウム電池の開発が進んでおり、蓄電効率は向上しています。太陽光パネルによる発電もこれまで以上に小型化できるかもしれません。
徹底的に導入コストとメンテナンスコストを下げる仕組みつくり
現在の観測用ブイは1基あたりの製造コストやメンテナンスコストが国の負担になっていますが、もう少しビジネス手法は用いればコスト低減は図れるのではないでしょうか?
まず、商船や漁業関係者と委託契約を結び、ブイのメンテナンスを外部に委託することで作業負荷を軽減することも考えられます。
また前述したとおり耐候性・耐久性、係留対策をしっかりしたうえでGPS機能とデータ送受信を行うだけの発電システムを持つ端末であれば、プロダクトデザインは一変する可能性があります。
メンテナンスコストを下げるためにも、小型化は有効です。一隻の船でいくつものブイを交換することも可能になるためです。
発電部、心臓部、そして心臓部を保護する保護部、海面海中との接水部の四部構成としてプロダクトを再編製し、心臓部となる部分にはスマートフォンで演算処理させれば機能する可能性はあります。
心臓部のスマートフォン化およびメンテナンスの外部委託化により、現在の導入・メンテナンスコストを劇的に削減し、発展途上国の津波予測の精度向上に寄与できるのではないでしょうか。
ただ、私は津波観測について知見があるわけではいので、不足している視点などがあると思います。
津波観測に詳しい方、そしてこのような開発テーマに共感して共同で開発して下さる経営者の方がいらっしゃいましたら是非ご連絡頂ければ幸いです。
最後に、今回の熊本を中心とした九州地方での震災により被災した皆様の一日も早い復興を祈念しております。
食品の傷みが視覚的にわかるツール開発
さて、前回は三次産業の食品ロスを減らせるプロダクトはないものかを考え、捨てるか食べるか、開封しないまま消費期限から2〜3日が冷蔵庫の中で過ぎてしまった、という超絶微妙なゾーンにフォーカスするところまで話を進めてきました。
似たような経験を経験した人も少なくないのではないでしょうか?
お弁当や生菓子など、買った後何かしらの理由で食べられず、消費期限を見たら既に過ぎててショックを受ける、というようことです。
1週間過ぎたら悩まず捨てるでしょうけど、2、3日は悩みますね。
このスイーツ結構美味しいやつだし、匂い嗅いでも平気そうだから、食べようかなとドキドキしながら食べたこと、ありませんか?
ドキドキしながら食べてもあまり美味しくないと思いますけど(笑)
この不安を取り除くにはどおすればよいでしょう?
誰かに毒味させるわけにもいかないですし、お店に聞いたらやめろと言われるに決まっております。
ポイントとするなら、未開封でちゃんと冷蔵庫で保存していた、ということ。
徐々に進行する食品の痛みを視覚化するツール
食品の傷みは「温度」で大きく異なることは言うまでもありませんね。作った時から食べるまで、場所が変われば温度も変わっていきます。
つまり、消費期限は一定の時間、ある程度の温度に晒されても大丈夫な期間、と言い換えることができます。
そこで、私は温度で色が変化するシールのようなプロダクトを考えました。
シールというのは、外装に貼ったり未開封であることを証すために使用することを想定しており、また既存の梱包のフローに影響を与えず、店頭で貼るだけという簡易性を重要視したためです。
このシールは不可逆的に色が変化する特殊塗料を使用し、触れた温度と湿度の量(時間)によってグラデーションのように変化する、そんなイメージです。
消費・賞味期限の記載も従来通り印字します。このシールは、あくまで食料の痛み度合いを視覚化するもので、時間とと共に色が変化するようなイメージです。
温度によって色が変化するので、当然高温の環境に置かれると色の変化は早まりますし、冷蔵庫のような環境であれば変化は緩やかなものになります。
未開封で冷蔵庫で保存していたけど消費期限が2,3日過ぎてしまった食材は、シールの色を見れば期限が少し過ぎてるとはいえ、色の変化で食べられる食べられないの判断がしやすくなります。
ところで、食品の「痛み」とは?
ここで、少し余談ですが食品が“傷む"とはどんな科学的反応なのでしょうか?
食品が傷む原因の大部分は、細菌やカビなどの微生物による食品の腐敗です。微生物は、条件がそろえば急速に増殖することが知られています。
では、その条件は何かと言うと、温度です。種類にもよりますが、細菌は30~35℃程度、カビは20~25℃程度が繁殖する最適の温度になります。夏場、冷蔵庫に入れずに放置した食品が一気に腐敗するのは、室温が微生物の繁殖に最適な温度だからです。
ゆえ、同じ賞味期限が記載された食品でも、その保存環境に温度が影響することがわかります。
しかし、印字されただけの賞味期限ではどのような温度環境で保存されてきたのかまで特定できません。
保存環境を視覚的に伝えるためのシールがあれば、賞味期限の印字に加えて色の変化で更に正しく食品の衛生状況を把握できます。
しかし、技術的に色が変わるシールは作れるのでしょうか?
温度によって不可逆的に色が変わる塗料は結構あります。
しかし、その変化には高い温度差が必要で、中には上の温度が100度以上必要な色もあります。お肉ならこんがり焼けてる温度です。
無理かなぁと思ってたところ、こちらの会社にこんな技術がありました。
大手の東洋紡株式会社様が2008年のプレスリリースに掲載している記事です。
www.toyobo.co.jp
ポリエステル樹脂に特殊な蛍光塗料をブレンドすることで、温度と時間によって緑〜橙色に色が変化すると。
さらにその温度幅は含有量で調節可能であるとありますね。
さらには賞味期限の警告サインにもなるとはっきり明記されてました!
いやはや、ここに技術のすべてが揃っていたわけですね。
こんなに素晴らしい技術が8年前に発明されているわけですが、まだ実際に賞味期限の目安として使われているシーンは見たことはありませんね。
東洋紡株式会社様のこの技術も素晴らしい技術ですが、こうした取り組みを地道に続けて三次産業の食品ロスへの取り組みが拡大されることを切に祈ります。
また、食品のロスに取り組まれている事業者の方でご意見頂ける方がいましたら、コメント等頂ければ幸いです。
生産する時も、加工する時も、販売する時も、出続ける食品ロス
この記事を読んで下さっている方たちの中で、日本の食料廃棄量がどれくらいかご存知の方はいらっしゃいますでしょうか。
その量、約2000万トン!
その内食べられる量は500〜900万トン!
日本が海外から輸入している食物量は約5500トンとされているので、40%近い量が廃棄されている、ということでしょうか。
食品廃棄ロスでは世界トップレベルを誇る日本
食品ロスに関する記事はネット上にたくさんあります。
日本の食品ロスだけで途上国の5000万人が一年間食べられる、などの試算を紹介しています。
私が食料廃棄に関心を持ち始めたのは、株式会社エードットという会社からのとある相談がきっかけでした。
同企業は「もったいないアクション」という活動を展開している会社で、私は微力ながら等活動の認知拡大を支援させてもらっております。
今回、このブログではこのアクションについて紹介させて頂ければと思います。
この活動は、魚介や野菜などで品質に問題ないにも関わらず廃棄される「もったいない食材」を美味しく提供することを主とした活動です。
第一号店の築地のもったいない食材を使った丸の内の居酒屋「魚治」が2015年1月にオープンしたのを皮切りに、2016年4月現在で4店舗オープンしております。
もったいないアクションのWEBサイトはこちら
mottainai-action.com
築地では毎日「競り残」と言われる鮮魚が廃棄されてしまっていました。
その売れ残る理由というのが何とももったいないのです。
・大きすぎて基底のケースに入らず、運びにくい
・蟹の足が一本だけ折れてる
・旬からズレてる上に量も微妙だったから引取手がいない
などなど、味や鮮度には全く影響の無いものばかり。
大量に魚を扱う以上、どうしても効率的に売っていかないとさばけない、ということは理解できますし、魚市場ならどこでも起こり得ると想像できます。築地に限ったことではないでしょう。
もったいないアクションではこうした食材を安価に仕入れ、実店舗を通じて顧客へ還元する仕組みを構築しています。
また、このアクションは農林水産省が主催する2015年度フードアクションニッポンアワードの販売活動部門においても優秀賞を受賞するなど、その活動に共感して下さる方が本当にたくさんいます。
こうした活動は普及と波及の両面から拡大させなければなりません。
ここでいう普及とは、この活動自体の認知拡大を意味し、波及はもったいない食材を減らそうという思い自体の拡大を意味します。
普及については私自身も既に頑張ってPRしていますし、この活動を拡大させるためにも必須にやらなければならないのでここでの言及は避け、波及について考察を進めます。
もったいない食材への様々なアプローチ
業務用の加工食材を滞留在庫などの理由で廃棄される前に販売している活動があります。
株式会社低音流通ネットワーク様が運営している
~中小企業の飲食店様専用サイト~ もったいない食材ドットコム
というサイトです。
送料無料の業務用食材なら もったいない食材ドットコム
もったいないアクションは今のところ生産(一次産業)寄り、もったいない食材ドットコムは取扱の食材的に加工(二次産業)寄りです。
小売、外食産業(三次産業)についての食品ロスへの取組みはどおでしょう
この記事を書いている2016年4月現在は、小売業についてはセブン-イレブンの消費期限が近いお弁当の割引問題、外食産業についてはCoCo壱番屋のロスを再販して産業廃棄物業者が摘発されたのは記憶に新しいところかと思います。
ここで、賞味期限と消費期限は違うことは読者の皆様でご存知の方も多いかと思いますが、改めて定義しておきます。
農林水産省の定義では、加工後に長期間保存ができないものは「消費期限」、保存が可能なものは「賞味期限」を表示するとしています。
農林水産省の定義はこちら
(http://www.maff.go.jp/j/fs/f_label/f_processed/limit.html より引用)
一般的に小売業の方が外食産業より品質基準が厳しいと言われていますが、外食産業もその品質基準は相当高く、一般的に品質的に問題ないと思われる期限より早い期日を賞味期限もしくは消費期限に設定しています。
運送状況や保存環境がお店で異なるので、念には念を、という基準を設けているためのようです。
安全基準を上げれば上げるほど、食品ロスが増えるジレンマに陥ります。
つまり、この賞味期限や消費期限を境にいきなり食品的にアウト、となるケースは少ないと言えるでしょう。
むしろ、これらの表示は開封前ということを前提にしています。それに対して開封後はなるべく早く、というざっくりした表記になることも多くなるのが不思議ですね。
開封前はメーカー責任、開封後はユーザー責任
そう、これらの設定はお客様のために見えて実は作りて側の企業の防衛のためなんです。
開封後は責任がユーザーへ移るわけなので、企業としては関与しない、という訳です。
当たり前といえばそうかもしれませんが、個人的には何だか寂しい気持ちになります。
買った後、家で開封しないまま期限が過ぎてしまったとします。お弁当などあまり日持ちしないものとなると少々悩みます。
500円のお弁当でお腹を壊したら嫌ですからね。
しかし、未開封で冷蔵庫に保存していたけど、消費期限から2〜3日経ったというという微妙なゾーンの時にどおでしょうか?
私もここは悩みます。一種のギャンブルです。
そして、とるリスクと得られるリターンを天秤にかけた時、明らかにとるリスクの比重が重いわけなので、多くの人が食べられるかもしれない食材をゴミ箱に入れるわけです。私もそうです。
もし、このギャンブルをギャンブルでなくすプロダクトがあれば、「まぁ、平気そうだから食べるか」ということに繋がるかもしれません。
わずかな量かもしれませんが、食品ロスの削減に寄与できるのです。
この回も長くなってきたので、次回のブログでいよいよプロダクトデザインについて、記載していきます。
ビニールハウスにイノベーションを!
前回に引き続き、農家の高齢化という問題に対して実は高齢化が問題ではなく、その背景に潜む競争力の低下が問題であると問題を再定義し、その背景から現在行っている延長で競争力を育んでいく、という考察をしました。
プロダクトで問題解決へ導く、というのが筆者の仕事ですので、そこからビニールハウスという視点に入りました。
ビニールハウスを作ろうとする場合は多額の投資と複数の男手が必要
ビニールハウスはその規模の違いこそあれ、導入するのには相当の投資が必要となります。
一般的には設置坪あたり導入費用として1~1.5万円必要といわれており、仮に100坪のビニールハウスを作ろうとする場合は100万円以上の費用が必要になります。
全国農業会議所によると露地栽培に比べ施設栽培(ビニールハウス)の初期投資は300万以上余分に必要という試算も出されております。加えて冷暖房等を入れる場合はランニングコスト、暴風や大雪による損壊、定期的に交換が必要なメンテンスコストなど、ビニールハウスは費用的デメリットが大きいのが現状です。
また購入した後も設置には男手が二人以上、丸一日は必要になる重労働です。ビニールハウスにも色々とあるので、専門の業者じゃないと設置不可能なものもあります。
少々話が脱線しますが、読者の皆様はビニールハウスは日本で開発されたということをご存知でしたでしょうか?
戦前は竹で骨組され、障子の紙(油紙)で覆われた、保温を種の目的としたものだったようです。
戦後、大手企業の資本が入り、竹はスチールパイプに、障子の紙はビニールフィルムに変わり、今に至っております。
戦後から今日にいたるまで、素材の改良や設置をしやすくしたりなどの部分改良はあったようですが、目立った大きな変化は見受けられません。
海外では使われていないゆえ、新規参入業者も多くないので大幅な変化が起こりにくい製品だったのかもしれません。
日本発祥のビニールハウス、今後の農業の競争力を養うためにはこのイノベーションは一つのきっかけになると感じております。
さて、ビニールハウスの構造について考察を進めていきます。
ビニールハウスの現在の課題は上記のとおり、①導入コストが高い、②メンテナンスコストも高い、③ランニングコストも高い、④設置するのが大変、などといったハード面および野菜への影響というソフト面がありますが、ここではハード面について考察します。ソフト面については農薬や品種改良など、プロダクトとはちょっと視点が違うのでここでは触れずにおきます。
さて、もし仮に①~④が現在より大幅に下がれば、施設野菜へ取り組む動機(モチベーション)が高まり、既存農家が新しい取り組みを始めたり、新規就農者の増加に寄与できると期待できます。
設置が大変という点については、キャンプやイベントなどに使うテントも以前はそこそこ大変でしたが、今ではワンタッチ式や引っ張るだけといった誰でも設置できるものが増えてきました。
ビニールハウスはかなり大掛かりな資材や工具、そして人手も必要です。
作り方はこちらが参考になります。(全農群馬県本部様が作成した動画)
かなりの数の工具です。
人手もかなり必要で、不慣れな人が一人や二人ではきちんとしたものができるとは思えません。
その後、巨大なビニールシートをかけていくわけですが、高いところに大きなものをかけていくのも疲れます。それを固定していく作業も。
組立はすべて現地施工です。
これを工場で組み上がっている形で搬入でき、現地ではワンタッチ(は言い過ぎかもしれませんけど)で広げられ、それらを組み合わせれば出来上がるビニールハウスがあれば、農業をやりたいなと思っている人で、頼れるベテラン農家の知人が少ない人でもチャレンジできるようになるのではないでしょうか。
工場でのロット生産なら、ある程度コストを抑えた形で生産することも可能かもしれません。
家などは図面を元に工場で大部分のプレカットは終えて、現地では組み立て中心という施工が当たり前になっていますよね。
ビニールハウスのイノベーションに挑む、我こそはという方、いらっしゃいましたら是非取り組んでみませんか?
農家の高齢化は問題じゃない!?
今回は農家の高齢化という社会課題に対して考察を進めてみます。
筆者は食べる通信という冊子のふくしまエリアの撮影を担当させて頂いており、取材の度に様々な農家さんに出会います。その農家さんは高齢の方がほとんとです。
日本の農業就農者の平均年齢をご存知でしょうか?
平成27年はずばり、67歳です。
農林水産省が算出してくれています。
若いひとが就農してもらえるよう、JAの職員の方たちは手厚い支援を用意しているし、農地法の改正などで耕作放棄地への新規就農者が土地を借りやすくなりつつあります。
そのような動きはあるので、よしよし、それでほっておけば大丈夫かというと、全然大丈夫じゃありません。
就農者の収入が、普通のサラリーマン並になるためには農業に関する経験値(時間)とそれなりの投資が必要になります。
経験値(時間)も無くお金も無い人は、農業に就いてもなかなか楽ではありません。むしろハローワークに行って求人広告を眺めたほうが、金銭面的にはいいでしょう。
なので、企業勤めの人はたとえ興味はあっても、実際に脱サラし、就農する方は決して多いとは言えません。
若い人が就農することが果たして本当に良いことなのか
農業の高齢化は前述の通り、どんどん進んでおります。若い人が農家になれば、確かに平均年齢は下がります。若くなるメリットとしては、重労働でもやっていける体力、新しいことへの挑戦力、今後しばらく就農してくれる継続力、などは挙げられるとは思います。
しかし、食料を生産するという点から見たらどおでしょうか?
体力があるから生産量は増えるのか、答えはNOですね。機械や大規模化によって効率的に収穫できれは、特に年齢は関係ありません。
挑戦力は、若い人なら誰でもあるというわけではありません。若くても保守的な人もいれば、高齢者でも革命的な人がいるでしょう。
継続力もしかり、確かに高齢者は健康を害しやすく、継続性は若い人よりは劣ります。
しかし、若い人は選択肢が豊富ゆえより魅力的な仕事があれば、農家をやめてしまうかもしれません。
このように、若い=生産量が増加する という方程式はあてはまりません。
年齢、性別に関係なく競争力をどう養うか
最近の若手就農者でメディアを賑わすのは若い30〜40代の女性です。いわゆる農業女子です。
農林水産省が旗振り役として牽引するこのプロジェクトも、就農者の平均年齢の若返りを図る一つの狙いといえます。
女性でも、兼業でも、若い人が就農すれば平均年齢は確かに下がります。
しかし、前述の通り若返れば良いというわけではないのです。
農業を企業並に収益化できないと、このままだと「お小遣い農業」になってしまいます。
本業は別。農業は片手間。家計の足しになれば、くらいの温度感。
こういう農家だけになると、日本の農業は危うくなります。
なぜなら、大規模で投資的かつ積極的なイノベーションは起こりにくくなります。
当然リスク(簡単に言うと借金)を極力負わず、政府の補助金を頼りに家計の足しにすることを優先するため、税金は浪費され、競争力は失い、海外勢にこの手の農家は一掃されます。
そういう農家を守るために、また税金が使われることでしょう。
さて、徐々に問題の本質が見えてきました。
過去の農業支援で足りない心技体
技術的にも制度的にも、就農者の姿勢的にも競争という言葉が抜けていることは多くの人が感じていると思います。
大規模化や農業法人化と政府が推進しているのは、この抜け落ちた競争力を制度的に養うために考え出された仕組みといえます。これが心技体の体でしょうか。
そういう官の仕組み作りの他に、民間ではスマホと農業を繋げる面白い仕組みもできてきてます。
スマホのゲーム感覚で野菜を育て、収穫まで成長させると本物の野菜が自宅に届く、というような取り組みです。これが技、といえます。
有名なところといえば愛媛県松山市のテレファーム様
http://www.telefarm.net
他にもいくつかあるので、興味が湧いた方はご自身でもAppStoreやGooglePlayで探して見てください。
それに加えて、IoT(Internet of Thing)の観点から全国から様々な品種の栽培データを集め、より効率的に最適な栽培方法で美味しい食材を育てる仕組み作りも始まっています。
農業とインターネット、それを媒介することを可能にしたスマホ。
今後、時間の経過と共に農家さんの中にもスマホを持っている人も増えていくでしょう。(2016年現在は高齢の農家さんに普及しているとは思えませんが)
官民が各々のフィールドで競争力の創出に励んでいる様子が伺えます。
このような取り組みはTPPが始まるとさらに加速度を増してリリースされると予想できます。
海外の就農者との競争により、競争力が無い農家は自然淘汰されることは容易に想像できますらね。
さて、それでは心、の方はというとどおでしょうか?平均年齢67歳の業界の心を動かすのは至難の業です。
そこで、競争してやろうとギラギラせずとも、競争力が自然と身につけられ、気がついたら創発的なことをやっている、という方向にシフトして考えた方がいいでしょう。
ゆえ、創発的なことを現在農家さんがやっている業務内で行う、ということが必要になります。
土作り、ビニールハウス管理、種まき、肥料や害虫対策、収穫、梱包や発送という当たり前の作業の中にヒントは無いか、考えてみましょう。
自然との共同作業ゆえ、人工的に自然環境を整えるビニールハウスに着目します。
さて、この会はここまでにして、次回にビニールハウスについての考察を進めます。
仕事しながら育児する人は泣けるほど忙しいので何とかしたい
2016年3月は、保育園落ちた日本死ねブログが一つのムーブメントを起こしており、政治で議論されるレベルにまで発展しました。
一個人の意見が、ネットを通じて雪だるま式に団体意見となり、国の施策に影響する時代になったんだなと改めて感じました。
私も3歳児と1歳児の子供がおり、まさに国の認可保育園は落ち続けている口です。
妻も職に就いており、夫婦の忙しさは尋常じゃありません。
時間的余裕は全くなく、朝起きてから寝るまで(というか寝てる時も良く起こされますが)ほぼノンストップです。
そんな状況にいる私としては、自分の得意分野で打開策が出てこないかと考えてみました。
それが、このブログのタイトルです。
仕事と育児の忙殺さから、ほんの少しでも気持ちを軽くするプロダクト
この問題はかなり壮大なため、もう少し深堀していきます。
働くママは時に厳しい選択に迫られます。
忙しいときの子供の突発的な発熱や病気のときです。
程度にもよりますが、子供はすぐに熱が上がります。しかも前兆無しに。
こういう事態の際には、誰もが「子供が苦しんでる時に仕事なんて」と思いますね。
なので、多くの母親は保育園からの呼び出しに怯えながら仕事をするわけで、重役になればなるほどその恐怖は大きくなるので、重役に就きたがらないし、意に反して就くこともあまりありません。
ビジネスウーマンとしての才覚のあるママは、この重荷と向き合うことになります。
なので、大半のママは仕事と育児の両立と言いつつも、軸足は子供で仕事はできる範囲、という結果になります。
こうした問題に助け舟となるプロダクトとは何でしょう。
おそらく、子供のケアを何かのプロダクトに託す、という選択肢は、完璧な育児ロボットができない限り無いでしょう。
どちらかというと、仕事の方をプロダクトでケアする、という方が現実的です。
ネット社会はテレワークをどこまで可能にしたか?
そう考えると、パソコンを筆頭にネットワークがあればどこでも仕事ができるようになりました。
いまやそういうビジネススタイルは全然珍しくなくなりましま。
ただ、顔が見えないと信用ならない、という職種の場合はそうもいきません。
人の気持ちによって、業績を左右する職種の場合はなかなかディスプレイ越しのコミュニケーションだと厳しいです。プロダクトデザインも好き嫌いの影響が大きい案件の場合は、担当者の心の機微を感じ取れないとうまくいくものもいかなくなります。
さて、そうなると、人の心の機微が子育てしながらでも感じ取れるプロダクト、ということが育児しながらでも仕事をする上で必要になります。
そんな製品があれば、働くママに余暇を産んだり、呼び出しに怯えなくて済む、ということになります。
それでは、人の心の機微について、考察します。
人の心の機微、なんてなかなか掴めるものではありませんが、目の動きや手の動き、癖や喋り方など総合的に判断して心理状況を汲み取っている、と言われます。
めちゃくちゃ繊細な情報です。動物的感覚に近い。
本気で心の機微を感じとるくらい微細な動きを伝えるためには、それなりのネットワーク回線が必要になります。加えて、それなりの解像度を有したモニターも。
リビングに置かれているテレビの活用
テレビは大型化、高解像度化が進んでおりますが、その活用コンテンツはテレビや映画、といったところが中心。テレビもインターネットに繋げられるようプラグ端子も付いていますし、PCに繋げられるようHDMI端子もあります。
しかしながら、ビジネスに使うということはあまりありませんでした。
なぜでしょう。
テレビ電話的に話すだけなら、PCのモニターとカメラで十分ですし、Skypeなど無料のサービスを使うなら、PCの方がインフラが整っているからでしょう。
しかし、すでに記載したように感情の機微を逃さず掴み取るにはそれでは不十分です。
家庭用のテレビにママ向け打ち合わせシステムを導入したら何が変わるのか
家庭用テレビはパソコンモニターに比べ結構大きいので、PCに比べて少し距離を起きますね。会議中の人と同じくらいの。
その距離感がいいんです。PCのテレビ会議ですと、よく顔を見ようと思うとかなりモニターに近づかなくてはならず、相手には心理的に近すぎる印象を与えてしまいます。
また大画面ですから、再生側の環境さえ整えばテレビを通じてみる相手の表情や仕草はよくわかります。
テレビにはマイクやカメラは付いていないので別途つける必要がありますが、昨今ではハイビジョン撮影が可能な外付けカメラも安価に販売されており、相手にも自分のことクリアな状況で伝えることが不可能ではなくなりました。
しかし、越えなければならないハードルはいくつかあります。
まずハイビジョンの動画をスムーズにやり取りするためのネットワーク回線。
そして再生側に求められる高いスペックのハードウェア(CPUやメモリ、ビデオボードなど)が必要になります。
ただし、回線速度は年々高速化が進んでいるということに加え、ハードウェアについては年々安価になっています。
家にいるのですから有線が使える可能性が高いので、受け手となる相手側の環境さえ整えば十分に再生は可能になります。
今現在ではまだ回線速度の壁が高いでしょうし、無料のサービスがあるのにお金を払って家のテレビに会議システムを導入する人は少ないかもしれません。
リビングで打ち合わせとなると背景に生活感が思いっきり映りますしね(笑)
しかしながら、私は近い将来、ネットワークの役割は「情報の伝達」から「感情の伝達」へシフトすると確信しています。
テレビの新しい活用、製品化されるためにはまだまだクリアしなくてはいけない課題もたくさんありますが、本格的な開発に前向きになっていただける方が一人でもいたら幸いです。
2017年12月追記
元グーグルの開発メンバーが心理的距離を無くすテレワークを開発中
こんな記事を書いた1年後、グーグルを卒業した方が立ち上げた、テレワークに関するスタートアップがまさにこの心理的な距離感を無くす取り組みを実践しています!
※クラウドファンディングでも目標額(200万円)を超えて達成して、今後の動向に注目です!
このブログについて
このブログでは社会に役立つプロダクトを紹介したり、あったらいいなを思い付いた時の備忘録的な要素を兼ねたブログです。
製品は何かしら人に役立つために産まれるわけですから、社会に役立つとかって書くと如何わしい何かに思われるかもしれませんので補足しておきます。
isip-worksのisipとは、Idea of Social Innovative Productの略で、社会問題をプロダクト製品で改善へ導くアイデア、という意味を込めてネーミングをつけております。
開発と製品化の間にある高い壁
私は長年、プロダクトデザインや製品開発といったものづくり関連に携わってきました。仕事では販促やマーケティングなどもよくやりました。
今はそんな経験値を活かして、製造業やものづくりのコンサルタントとして活動しています。
開発製品を実際に市場に投入するには高い壁があり、それを乗り切って製品化しただけでも十分素晴らしい。
しかし、販売を開始してもマーケティングや市場環境の変化で売れない、陳腐化などなど、市場に浸透させるのはさらに大変です。
ボディショップの動物実験の広報戦略から見る経済性と社会性
社会性重視の製品は、経済至上主義の中から零れ落ちそうな分野に挑んでいたりしているわけなので、さらに大変です。
価値感を経済面と社会面の両面から捉えられる消費者に訴えたり、そうした方を増やす活動をしたりしないといけません。
化粧品を製造するbody shopの動物実験に反対する広報戦略はそれに近いですね。競合が多い市場の中で、社会性の高い製品を作って生き残るために、ターゲットの方にダイレクトに届けつつ、動物実験の悲惨さを暗に訴えターゲット全体のボリュームを増やすマーケティングです。
THE BODY SHOPの動物実験に対するコメント
http://www.the-body-shop.co.jp/commitment/against-animal-testing.html
話題の新製品やニュースをものづくり目線で紹介
新しい技術や市場環境の変化を捉えつつ、ものづくりに興味があったり新しい製品が好きな方に、面白く読んでもらえればと思っています。
私の仕事がら、開発〜製造〜販売で色々な課題やドラマを垣間見ていますので、そうした目線から話題の新製品やニュースについて、その裏側を考察していきます。